病院経営

病院経営者必見!スムーズな譲渡・事業承継の進め方とは?その2

前回の記事では、病院譲渡・事業承継の基礎知識や具体的な手続き、法務・税務のポイント について詳しく解説しました。病院をスムーズに引き継ぐためには、適切な承継方法を選び、事前にしっかりと準備を進めることが重要 です。

今回は、実際の成功事例をもとに、スムーズな病院譲渡・事業承継を実現するためのポイント をご紹介します。さらに、事業承継を進める際の注意点や、専門家の活用方法、公的支援制度の活用 についても解説します。これから病院の譲渡を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

5. 病院譲渡・事業承継の成功事例

病院譲渡や事業承継は、経営者の決断次第で大きく結果が変わります。適切な準備と計画があれば、スムーズな引き継ぎが可能となり、病院の存続や発展につながります。ここでは、親族内承継・従業員承継・M&Aによる病院譲渡の成功事例 を紹介し、それぞれのポイントを解説します。


5-1. 親族内承継の成功事例

① 事例:親族間の計画的な引き継ぎで経営を安定化

ある個人経営の病院では、院長が70代に差し掛かったタイミングで、医師である息子に事業を引き継ぐ計画 を立てました。承継準備は 10年前から開始 し、後継者がスムーズに経営を引き継げるよう、段階的に経営のノウハウを学ばせました。

成功のポイント
早期の事業承継計画:10年前から後継者に病院経営を学ばせ、実務経験を積ませた。
従業員との信頼関係の構築:引き継ぎ後も安心して働ける環境を作った。
税制優遇制度の活用:事業承継税制を活用し、相続税負担を大幅に軽減。

この結果、病院の診療体制は大きく変わることなく継続され、地域の患者も安心して通い続けることができました。


5-2. 従業員承継の成功事例

① 事例:右腕のベテラン医師が病院を引き継ぎ、安定経営を実現

ある総合病院では、院長が高齢のため退任を決意しました。しかし、家族に後継者がいなかったため、長年病院に勤務していた副院長に事業を引き継ぐ形での承継(MBO:マネジメント・バイアウト) を選択しました。

成功のポイント
院長の引退前に後継者を内部から育成:副院長が徐々に経営に関与し、診療方針を引き継ぐ準備を進めた。
金融機関の支援を得て、資金調達を成功させた:買収資金を確保するため、金融機関と協議し、低金利融資を獲得。
従業員のモチベーション維持に注力:院長交代後もスタッフの雇用を維持し、診療体制の安定化を図った。

結果として、経営陣の交代後も病院の運営は安定し、患者やスタッフの信頼を損なうことなく継続 することができました。


5-3. M&Aによる成功事例

① 事例:経営難の病院が大手医療法人のグループ入りで再建

地方のある病院では、患者数の減少や診療報酬の改定により 経営難に直面 していました。現院長は 「病院を存続させたいが、経営を続けることが困難」 という状況の中、M&A(第三者承継)を決断。結果的に、大手医療法人がこの病院を買収し、経営体制を強化しました。

成功のポイント
事業再生の専門家と連携:M&Aのプロに相談し、最適な買い手を見つけることに成功。
大手医療法人の支援を活用:グループ内のネットワークを活かし、診療体制を強化。
設備投資と人材確保を実現:新たな経営母体の支援により、最新医療機器の導入や医師の採用が進み、病院の競争力が向上。

その結果、病院は 赤字経営から黒字化 し、地域の患者にも引き続き医療を提供できる体制が整いました。


病院譲渡・事業承継の成功には早めの準備が鍵!

病院の事業承継には 親族内承継、従業員承継、M&A という3つの選択肢があり、それぞれにメリットと成功のポイントがあります。

成功するための共通ポイント

🔹 事業承継の計画を早めに立てる(5~10年前から準備)
🔹 後継者に経営ノウハウを学ばせる(実務経験や経営研修を実施)
🔹 専門家と連携し、最適な方法を選択する(税理士・弁護士・M&Aアドバイザーを活用)
🔹 従業員・患者との信頼関係を維持する(スムーズな承継を進め、安心感を与える)

適切な準備と戦略的な進め方を行うことで、病院の未来を守り、次世代へとスムーズに引き継ぐことが可能になります。病院譲渡・事業承継を検討している方は、 成功事例を参考にしながら、早めの準備を進めましょう。

6. 病院譲渡・事業承継を進める際の注意点

病院の譲渡や事業承継は、単なる経営権の移転ではなく、病院の理念・診療体制・地域医療への責任を次世代へ引き継ぐ重要なプロセス です。そのため、適切な準備を行わないと、後継者の選定ミス、従業員や患者の混乱、さらには情報漏洩などの問題が発生する可能性があります。ここでは、病院譲渡・事業承継を円滑に進めるための注意点 を解説します。


6-1. 後継者の選定と育成

病院承継の成功は、適切な後継者選びにかかっています。 親族内承継、従業員承継、M&A などの選択肢の中から最適な後継者を選び、その人物が経営を担う準備をしっかり整えることが重要です。

① 後継者の選定ポイント

後継者の選定にあたっては、次の3つのポイントを考慮する必要があります。

医療の知識と経営のバランス

  • 医師としての経験が豊富でも、経営スキルが不足していると、病院運営は難しくなる。
  • 経営能力がある人物を選定し、必要に応じて外部の経営コンサルタントを活用する。

病院の理念や診療方針を引き継げる人物

  • 先代の理念を尊重しながら、現代の医療ニーズに対応できる柔軟な思考を持つ後継者が望ましい。
  • 患者や地域社会との関係を大切にできる人物を選ぶ。

従業員や取引先と良好な関係を築ける能力

  • 医療スタッフや取引先との関係を維持できるコミュニケーション能力が必要。
  • 信頼関係を築くために、引継ぎ期間中に積極的に関係構築を行う。

② 後継者の育成計画

後継者を選定した後は、スムーズに経営を引き継げるよう 段階的な育成計画を立てる ことが重要です。

🔹 数年前から経営に関与させる(事務業務・財務管理・スタッフマネジメントの実践)
🔹 経営研修・M&Aアドバイザーの活用(経営スキルを向上させるための外部研修を受講)
🔹 実際の病院運営を徐々に任せる(少しずつ決定権を与え、実務経験を積ませる)


6-2. 従業員や患者への対応

病院譲渡・事業承継を進める際は、従業員や患者への影響を最小限に抑える ことが重要です。経営が変わることで、スタッフの不安や患者の信頼低下につながる可能性があるため、適切なコミュニケーションを取る必要があります。

① 従業員への対応

早めに説明し、不安を解消する

  • 突然の経営交代ではなく、事前にスタッフへ説明会を開き、承継の背景や今後の方針を伝える。
  • 「雇用の継続」「給与・待遇の維持」などの重要なポイントを明確にし、不安を軽減する。

新経営者との関係構築をサポート

  • 後継者がスタッフとの信頼関係を築けるよう、現経営者が紹介し、対話の場を増やす。
  • 可能であれば、新経営者が院内の現場に入り、スタッフと直接コミュニケーションを取る機会を設ける。

② 患者への対応

事前に広報し、安心感を与える

  • 公式サイトや院内掲示板を活用し、「病院譲渡・事業承継についての告知」を行う。
  • 患者向けの説明会を開催し、診療方針の変更がないことを伝えることで、安心感を与える。

診療の質を維持するための体制を整える

  • スタッフの入れ替えがある場合は、混乱を防ぐためにスムーズな引継ぎを行う。
  • 診療時間や診療科目の変更がある場合は、早めに患者へ伝える。

6-3. 情報漏洩防止と秘密保持

病院譲渡・事業承継では、機密情報の管理が極めて重要 です。M&Aプロセスでは、売却を検討していることが外部に漏れると、従業員や患者の不安を招く 可能性があります。さらに、医療データや個人情報が不適切に扱われると、法的リスクにつながる こともあります。

① M&Aプロセスの情報管理

秘密保持契約(NDA)を締結する

  • M&A交渉の段階で、関係者(買収企業・M&A仲介会社など)と NDA(秘密保持契約) を結び、情報の漏洩を防ぐ。
  • 取引が成立しなかった場合でも、機密情報が流出しないように管理する。

内部関係者への情報管理の徹底

  • 院長・経営幹部・弁護士・税理士など、必要最小限の関係者のみが情報にアクセスできるようにする。
  • 交渉が確定するまで、一般スタッフや取引先には公表しない。

② 医療データ・患者情報の保護

個人情報保護法に基づくデータ管理

  • 電子カルテ・診療記録の適切な引き継ぎ を行い、患者データの漏洩を防ぐ。
  • ITセキュリティを強化し、承継時にデータの破損や流出が発生しないよう管理する。

取引先・金融機関との機密保持契約を確認

  • 事業承継に伴い、取引先や金融機関との契約内容を見直し、情報漏洩リスクを回避する。

成功する病院譲渡・事業承継には慎重な対応が必要

病院の譲渡・事業承継を成功させるためには、次の3つのポイントを重視することが重要です。

🔹 後継者を適切に選び、事前に育成する(経営スキルを習得させ、スムーズな移行を実現)
🔹 従業員・患者に対する適切な対応を行う(早めに情報を共有し、不安を解消)
🔹 情報漏洩リスクを防ぎ、秘密保持を徹底する(M&A交渉の段階から慎重に対応)

慎重な準備と計画的な進行が、円滑な病院譲渡・事業承継の鍵となります。病院の未来を守るために、適切な手続きを踏み、関係者の信頼を維持しながら進めましょう。

7. 専門家の活用と支援体制

病院譲渡や事業承継をスムーズに進めるためには、専門家のサポートが欠かせません。 コンサルタントや金融機関、公的支援制度を活用することで、経営・財務・法務の各分野で適切な対策を講じることが可能 になります。ここでは、信頼できる専門家の選び方や利用できる支援制度 について解説します。


7-1. コンサルタントやアドバイザーの選び方

病院譲渡・事業承継には、M&A仲介会社・医療経営コンサルタント・税理士・弁護士 など、さまざまな専門家が関わります。適切なアドバイザーを選ぶことで、手続きを円滑に進め、リスクを最小限に抑えることができます。

① コンサルタント・アドバイザーを活用するメリット

M&A・事業承継の専門知識を活かせる

  • 法務・財務・経営戦略に精通したプロの視点から、最適な承継方法を提案してもらえる。
  • 契約交渉の支援や譲渡価格の適正評価 を行い、スムーズな取引を実現できる。

買い手・後継者のマッチングを支援

  • 第三者承継(M&A) の場合、適切な買い手を見つけるためのマッチングサービスを提供しているコンサル会社も多い。
  • 後継者の育成支援や経営研修を提供するコンサルもある。

税務・法務リスクを軽減

  • 税理士・弁護士との連携 により、税務申告や契約書の作成をスムーズに行うことができる。

② 信頼できる専門家の選び方

🔹 医療業界に特化したコンサル会社を選ぶ

  • 病院経営やM&Aの実績がある会社 を選ぶことで、業界特有の課題に対応できる。

🔹 費用とサポート内容を事前に確認する

  • M&A仲介会社やコンサルタントの 手数料体系(成功報酬・着手金など) を事前に確認する。
  • 契約終了後のフォローアップ支援 があるかどうかも重要。

🔹 口コミや評判を調査する

  • 実際に病院の承継を成功させた事例があるか、他の医療機関の口コミや事例を確認 する。

7-2. 金融機関や専門機関の支援策

事業承継や病院譲渡には、資金調達や財務管理が大きな課題 となります。金融機関や専門機関の支援を活用することで、資金計画を安定させることができます。

① 金融機関の支援策

事業承継向けの融資プログラム

  • 銀行や信用金庫が提供する「事業承継融資」 を活用することで、後継者が病院を買収する資金を確保 できる。
  • MBO(マネジメント・バイアウト) の際、従業員が病院を引き継ぐための資金調達が可能。

M&A資金調達のサポート

  • 買い手が資金を調達できるよう、低金利融資や補助金の提案を受けられる。
  • 金融機関のM&A仲介サービスを利用することで、売り手と買い手をマッチングできる。

② 専門機関の支援策

日本政策金融公庫の支援プログラム

  • 日本政策金融公庫では、事業承継資金の低利融資を提供 しているため、事業承継の資金負担を軽減できる。
  • 「事業承継マッチング支援」 により、M&Aや後継者探しのサポートも受けられる。

M&A専門機関の利用

  • M&A仲介会社や事業承継支援センター では、買い手と売り手のマッチングサービスを提供。
  • 財務・法務のアドバイスも受けられるため、スムーズな手続きが可能。

7-3. 公的支援制度の活用方法

病院譲渡や事業承継では、国や自治体の公的支援制度を活用することで、税負担の軽減や資金調達がスムーズに進みます。 特に 事業承継税制各種補助金 を活用することで、コストを抑えた承継が可能になります。

① 事業承継税制の活用

相続税・贈与税の負担軽減

  • 「事業承継税制(特例措置)」 を活用することで、病院の事業資産にかかる相続税や贈与税の納税が猶予または免除 される。
  • 後継者が一定期間(5年)事業を継続することで、最終的に税負担がゼロになる 可能性もある。

税務申告の際の注意点

  • 事業承継税制を適用するには 事前の計画と書類申請が必要 になるため、税理士と連携して進めることが重要。

② 各種補助金・助成金の活用

事業再構築補助金

  • 事業承継と合わせて 病院の設備投資や診療体制の改革 を行う場合、補助金を活用できる。
  • 最大で数千万円の補助が受けられるため、設備更新や診療科目の拡充に活用可能。

地域医療支援助成金

  • 地域医療を支える病院向けに、自治体が事業承継支援のための助成金を提供 しているケースがある。

M&A補助金

  • M&Aによる病院譲渡を支援するための補助金があり、仲介手数料や譲渡手続きのコストを一部補助 してもらえる場合がある。

専門家の活用で病院譲渡・事業承継をスムーズに!

病院譲渡・事業承継を成功させるためには、専門家や金融機関、公的支援制度をフル活用することが重要 です。

専門家(コンサルタント・税理士・弁護士)を活用し、法務・税務のリスクを回避する。
金融機関の支援を受け、資金調達やM&Aマッチングをスムーズに進める。
公的支援制度を活用し、税負担を軽減しながら承継を進める。

適切な支援を活用しながら、安心・確実な病院承継を実現しましょう!

病院譲渡・事業承継を成功させるためのポイントとは?

病院譲渡・事業承継は、単なる経営権の移転ではなく、病院の理念や診療体制を未来へ引き継ぐ重要なプロセスです。適切な計画と準備を行うことで、スムーズな移行が可能になります。本記事では、成功のための重要ポイントを解説します。

1. 後継者の選定と育成が鍵

病院の承継では、後継者の選定が最も重要な課題 です。親族内承継、従業員承継(MBO)、M&Aなどの選択肢の中から最適な方法を選び、後継者がスムーズに経営を引き継げるよう 経営研修や実務経験を積ませること が大切です。

2. 従業員・患者の信頼を維持する対応

経営者交代は、スタッフや患者に不安を与える可能性があります。事前に説明会を実施し、診療方針の維持や雇用の安定 を伝えることで信頼を確保しましょう。

3. 税務・法務の対策を万全に

病院承継では、相続税・贈与税の負担軽減策や譲渡益課税の最適化が必要 です。また、病院運営に関わる許認可の継承や契約・債務の引き継ぎも慎重に行い、法的リスクを回避しましょう。

4. 専門家や公的支援を活用する

成功する病院譲渡・承継には、M&Aコンサルタント・税理士・弁護士などの専門家の支援 が欠かせません。また、事業承継税制や補助金・助成金を活用することで、税負担や資金調達の課題を解決 できます。

病院譲渡・事業承継を成功させるには、早期の準備・適切な後継者の育成・専門家の活用 が重要です。計画的に進めることで、病院の未来を守り、スムーズな移行を実現しましょう。

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