2026年の診療報酬改定は、これまでの改定とは性質が大きく異なります。
単なる点数調整や一部加算の見直しではなく、医療提供体制そのものを組み替えるための「構造転換型の改定」になる可能性が高いからです。
すでに医療現場では、人件費の上昇、医師・看護師不足、物価高、DX対応の遅れなど、経営を圧迫する要因が同時多発的に起こっています。そこに、外来・入院機能の再編、地域医療構想の実行フェーズ、医療DXの本格義務化が重なり、「今まで通りの運営」では立ち行かない医療機関が確実に増える局面を迎えています。
一方で、2026年の診療報酬改定は「厳しい改定」であると同時に、経営を立て直すチャンスでもあります。
国が評価しようとしているのは、単に診療量が多い医療機関ではなく、
- 人材を適切に確保・育成できているか
- 医療DXを活用し、効率的な医療提供ができているか
- 地域の中で役割を明確にし、連携できているか
といった “持続可能な医療経営ができているかどうか” です。
つまり、改定の内容を正しく理解し、早い段階から体制整備を進めた医療機関ほど、
診療報酬改定を「追い風」に変えることができるということです。
本記事では、2026年診療報酬改定の全体像を経営目線で整理しながら、
病院・クリニックそれぞれにとって どこが影響を受け、何を準備すべきなのか をわかりやすく解説します。
「改定内容が難しくてよく分からない」
「自院にどう影響するのか判断できない」
そんな方こそ、ぜひ最後までご覧ください。
2026年以降も安定した医療経営を続けるためのヒントが、きっと見つかるはずです。
1. 2026年診療報酬改定の全体像
2026年の診療報酬改定を正しく理解するためには、「点数が上がる・下がる」という表面的な話ではなく、国が医療機関に何を求めているのかを読み解く必要があります。
今回の改定は、医療提供体制を次の10年に向けて組み替えるための“方向付け”の意味合いが非常に強い改定です。
1-1. なぜ2026年改定は「重要な分岐点」なのか
2026年改定がこれまでと決定的に違う理由は、複数の制度改革が同時に収束するタイミングだからです。
背景にある大きな流れ
- 医師の働き方改革が「制度導入」から「定着・是正フェーズ」へ移行
- 団塊世代が後期高齢者となり、医療需要構造が大きく変化
- 地域医療構想が“計画”から“実行”へ本格移行
- 医療DX(電子カルテ標準化・情報連携)の義務化フェーズ突入
これまでの改定は、どこか「現状維持を前提とした微調整」が中心でした。
しかし2026年改定は、現状のままでは医療制度がもたないことを前提にした改定です。
つまり、
「今の運営を前提に、少し良くする改定」
ではなく、
「運営のあり方そのものを変えない医療機関は評価しない改定」
という位置付けになります。
1-2. 国が本当にやりたい医療提供体制の方向性
2026年改定で国が明確に示そうとしている方向性は、次の3点に集約されます。
① 医療機能の明確化と役割分担
- 急性期・回復期・慢性期・在宅の役割をはっきり分ける
- 「何でも診る医療機関」より「役割が明確な医療機関」を評価
- 病床数や診療内容が地域ニーズと合っているかが問われる
② 人材を守れる医療機関を評価
- 長時間労働を前提とした運営は是正対象
- 勤務環境・タスクシフト・業務効率化を進めているか
- 人材定着・教育体制が整っているか
診療報酬は、人材を酷使して成り立つ経営モデルからの脱却を強く後押しします。
③ DXと連携を前提とした医療体制
- 電子カルテ情報の標準化
- 地域での診療情報共有
- 医療・介護・薬局とのデータ連携
「紙・属人化・院内完結型」の医療機関は、
制度上、徐々に不利になる設計が進んでいます。
1-3. 2024・2025年改定から見える“連続性”
2026年改定は突然始まるものではありません。
実は、すでに2024年・2025年改定で“布石”は打たれています。
これまでの流れ
- 働き方改革関連評価の導入
- DX加算・体制整備加算の拡充
- 紹介率・逆紹介率など連携指標の重視
- 地域包括ケア・在宅医療の評価強化
これらはすべて、
「2026年に本格評価するための準備段階」
と考えると理解しやすいでしょう。
2026年改定では、
- 体制を整えてきた医療機関は評価される
- 準備をしてこなかった医療機関は、静かに評価を落とす
という形で、差が一気に可視化される可能性が高いと見られます。
1章まとめ:2026年改定は“選別の改定”
2026年診療報酬改定の本質は、
すべての医療機関を守る改定ではないという点にあります。
- 役割が明確
- 人材を守れている
- DX・連携に対応している
こうした医療機関を評価し、
そうでない医療機関には「変わること」を促す改定です。 次章では、
「では、具体的にどこがどう変わるのか」
——人件費、外来・入院、DX、加算の観点から詳しく見ていきます。

2. 2026年改定で特に影響を受けるポイント
2026年の診療報酬改定では、すべての医療機関に一律で影響が出るわけではありません。
影響が大きいポイントは明確に絞られており、そこへの対応有無で経営差が広がる構造になっています。
ここでは、病院・クリニック経営に直結する重要ポイントを整理します。
2-1. 人件費上昇をどう評価するのか(働き方改革の最終整理)
最大の注目点は、人件費上昇を前提とした評価設計です。
これまで人件費は「コスト」として扱われがちでしたが、2026年改定では考え方が変わります。
想定される方向性
- 医師・看護師の労働時間管理が厳格化
- タスクシフト・タスクシェアの実施状況を評価
- 勤務環境改善に取り組む医療機関をプラス評価
- 人件費を抑えるための“無理な運営”は是正対象
経営への影響
- 人件費をかけている医療機関=不利、ではない
- 「人件費をかける理由」が明確な医療機関は評価される
- 業務効率化・DXとセットでの人材活用が前提条件
ポイント
👉 人件費を削る経営から、人件費を活かす経営へ転換できるかが鍵。
2-2. 外来・入院・在宅の役割再編と評価の変化
2026年改定では、医療機能ごとの役割分担がさらに明確になります。
外来
- 慢性疾患・軽症対応は地域へ分散
- 紹介率・逆紹介率がより重要に
- 外来特化型クリニックは“専門性”が問われる
入院
- 急性期・回復期・慢性期の線引きが厳格化
- 病床機能と実態が乖離している医療機関は不利
- 稼働率・在院日数の適正化が強く求められる
在宅
- 在宅医療・訪問診療は引き続き評価対象
- 介護・訪問看護との連携体制が重要
- 単独対応より「チーム型在宅」が評価されやすい
ポイント
👉 「全部やる」より 「何をやらないかを決める」 経営判断が必要。
2-3. 医療DX・データ連携に関する評価の本格化
2026年改定では、DXは加算の“おまけ”ではなく、
診療報酬全体の前提条件になっていきます。
評価対象になりやすい領域
- 電子カルテ標準化への対応
- 診療情報の地域連携(紹介・逆紹介)
- オンライン資格確認・電子処方箋
- デジタル問診・予約管理
- 医療安全・業務改善へのDX活用
経営的な意味
- DX未対応=評価を受ける土俵に立てない
- DX対応=業務効率化+加算取得+人材定着
- 導入より「活用状況」が問われる
ポイント
👉 DXは「投資」ではなく、経営維持の必須条件。
2-4. 加算の「取れる・取れない」が明確に分かれる理由
2026年改定では、加算がさらに整理され、
体制整備ができていない医療機関は自然に取りこぼす設計になります。
よくある加算取得失敗の要因
- 書類・体制はあるが運用されていない
- 人員配置が基準ギリギリ
- 実績データが不足している
- 職員が算定要件を理解していない
今後の方向性
- 形だけの体制整備は評価されにくい
- 実績・データ・運用状況を重視
- 定期的な見直し・改善が前提
ポイント
👉 加算は「取るもの」ではなく、
👉 「継続的に維持できるか」が問われる時代。
2章まとめ:影響を受けるのは“準備不足の医療機関”
2026年改定で大きな影響を受けるのは、
実はすべての医療機関ではありません。
- 人材戦略を後回しにしている
- 医療DXを「そのうち」と考えている
- 自院の役割を整理していない
- 加算を“なんとなく”で取っている
こうした医療機関ほど、静かに評価を落とすリスクがあります。
次章では、
👉 3. 病院・クリニック経営への実務インパクト
として、病院・クリニック別に何が変わるのかを具体的に解説します。

3. 病院・クリニック経営への実務インパクト
2026年診療報酬改定の“本当の影響”は、点数表を読んだだけでは見えてきません。
重要なのは、改定が誘導する方向に合わせて 医療機関の運営モデルが再設計される ことです。
言い換えると、2026年改定は
「どの医療機関が、どんな運営をすべきか」を選別する仕組み になっていきます。
3-1. 病院経営への影響(急性期・回復期・慢性期)
病院は特に、病床機能と収益構造に直撃します。
ポイントは「どの機能で稼ぐか」「どの機能は連携で補うか」を明確にすることです。
急性期病院に起こりやすい影響
- 人件費増により利益が圧迫(特に夜間・救急)
- 入院の評価は“質と効率”がより強く問われる
- 病床稼働率の低い病棟は、固定費負担が重くなる
- 紹介率・逆紹介率など地域連携の指標が重要化
急性期の勝ち筋
- 救急・手術・高度医療を「得意領域として尖らせる」
- 地域連携室の強化で紹介患者を安定供給
- 病棟運営の標準化(看護配置・記録時間・動線改善)
回復期(地域包括ケア含む)に起こりやすい影響
- 地域包括ケア・在宅復帰の評価が“実績重視”へ
- 退院支援・在宅連携が弱いと評価が伸びにくい
- リハビリ提供体制・多職種連携の運用が鍵
回復期の勝ち筋
- 退院支援を仕組み化(連携先の固定化・逆紹介の流れ)
- 多職種カンファを「形式」から「成果」へ
- 在宅・施設連携を軸に“地域で必要な病院”になる
慢性期病院に起こりやすい影響
- 長期入院モデルへの評価は厳格化しやすい
- 医療区分・ADL・重症度の管理がより重要
- 人材不足で運営が不安定になると収益も連動して低下
慢性期の勝ち筋
- 患者層と提供価値(医療必要度)を明確化
- 看護・介護のタスク配分最適化(省力化投資)
- 医療安全・褥瘡・感染など“質の管理”を徹底し減点回避
3-2. クリニック経営への影響(外来・専門特化)
クリニックは病院ほど制度の直撃を受けないように見えますが、
2026年以降は 「患者に選ばれる仕組み」と「外来効率」 が収益を大きく左右します。
外来中心クリニックに起こりやすい影響
- 慢性疾患管理や生活習慣病領域は“診療の質・継続管理”が問われやすい
- 予約・問診・会計など外来オペレーションが競争力になる
- 医療DX対応(オンライン資格確認、電子処方箋など)が実務負担の差になる
クリニックの勝ち筋
- デジタル問診・予約の導入で回転率を上げる
- 診療の標準化(説明テンプレ・再診導線)で属人性を減らす
- 口コミ・検索・導線設計を含めた“地域での選ばれ方”を作る
専門特化クリニックに起こりやすい影響
- 専門領域は強いが、患者流入が広告依存だと不安定
- 紹介(病院・他科)ルートの強化が安定経営に直結
- 自費との組み合わせ設計も重要になる
専門特化の勝ち筋
- 紹介率を上げる地域連携(病院・診療所・薬局)
- 専門性の見える化(症例領域・対象疾患・診療方針)
- “通いやすさ”の改善(予約・導線・待ち時間の短縮)
3-3. 収益が伸びる医療機関・落ちる医療機関の違い
2026年改定の本質は、「取り組んだ医療機関が報われる」ことです。
伸びる医療機関と落ちる医療機関の違いは、以下に集約されます。
伸びる医療機関の共通点
- 自院の役割が明確(地域でのポジションが説明できる)
- 人材戦略(採用・定着・育成)を“経営の柱”にしている
- DXを導入ではなく活用している(業務改善につながっている)
- 加算を「取る」ではなく「維持する」体制がある
- 連携ルートが複数あり患者数が安定している
落ちやすい医療機関の共通点
- 何となく従来運営を続けている(役割が曖昧)
- 人材不足を“現場の頑張り”で埋めている
- DXが後回しで、事務負担・待ち時間が増えている
- 加算が担当者依存で、欠員や制度変更に弱い
- 紹介・逆紹介が弱く、患者数が景気・競合に左右される
3章まとめ:2026年改定は「運営モデルの差」を拡大させる
2026年改定は、点数の上げ下げよりも
医療機関の運営モデルを選別し、差を広げる改定 です。
- 病院は「機能と病床の再設計」
- クリニックは「外来効率と選ばれる仕組み」
- 共通するのは「人材×DX×連携」を経営に組み込むこと

4. 2026年診療報酬改定に向けて今すぐやるべき対策
2026年診療報酬改定は、「改定内容を知っているか」よりも
「改定までにどこまで準備できているか」 が結果を左右します。
ここでは、病院・クリニックが今すぐ着手すべき対策を、優先順位ごとに整理します。
4-1. 改定前に必ず行うべき経営チェックリスト
まずは、自院の現状を客観的に把握することが重要です。
以下のチェック項目に「即答できない」ものがあれば、要注意です。
▼経営・収益面
- 自院の主な収益源(診療科・病床・外来)は明確か
- 病床稼働率・外来回転率を定期的に把握しているか
- 人件費率を月次で確認しているか
- 算定している加算と、未取得の加算を整理できているか
▼人材・労務面
- 医師・看護師の時間外労働を正確に把握しているか
- タスクシフト・タスクシェアが制度として運用されているか
- 離職理由を把握し、対策を講じているか
▼DX・業務面
- 電子カルテ・予約・問診・会計の業務が分断されていないか
- 紙業務・属人業務がどこに残っているか把握しているか
- DX導入の目的(効率化・収益・人材対策)が明確か
ポイント
👉 このチェックは「対策の出発点」。
👉 できていない項目=2026年に評価を落とすリスク です。
4-2. 体制整備・DX・人材戦略の優先順位
すべてを一度に整える必要はありません。
重要なのは 「正しい順序で進めること」 です。
① 人材・労務の見直し(最優先)
- 労働時間管理の徹底
- 夜勤・当直体制の最適化
- タスク配分の見直し
- 管理職(師長・事務長)のマネジメント力強化
▶ 人材が安定しなければ、どの施策も回りません。
② 外来・病棟オペレーションの効率化
- 外来:予約・問診・導線の見直し
- 病棟:記録・申し送り・看護動線の標準化
- 不要業務の削減(「今までやってきた」業務の棚卸し)
▶ 人件費上昇を吸収できる体制づくり が目的。
③ 医療DXの段階的導入
- 電子カルテ標準化対応の確認
- デジタル問診・予約管理の導入
- データ活用(稼働率・待ち時間・業務時間の見える化)
▶ DXは「導入」ではなく「使えるかどうか」が評価対象。
④ 地域連携・加算体制の再構築
- 紹介・逆紹介ルートの整理
- 地域医療機関との役割分担の明確化
- 加算要件の再確認と実運用チェック
▶ 連携が収益に直結するフェーズ に入ります。
4-3. 外部支援(コンサル・DX・補助金)を使う判断基準
2026年改定対応は、
「すべて自前でやる」より「外部を上手く使う」方が成功確率が高い のが実情です。
外部支援を検討すべきケース
- 事務長・管理職が現場業務で手一杯
- 改定内容を読んでも自院への影響が判断できない
- DX導入が進まず、業務負荷が増えている
- 加算取得・維持に不安がある
外部支援を使うメリット
- 改定を“自院目線”で整理してもらえる
- 優先順位が明確になり無駄な投資を防げる
- 現場を止めずに体制整備が進む
- 補助金・助成金の活用でコストを抑えられる
重要ポイント
👉 外部支援は「丸投げ」ではなく
👉 “意思決定を早めるための道具”として使う のが正解。
4章まとめ:2026年改定対策は「早く動いた医療機関」が勝つ
2026年診療報酬改定は、
準備期間がある数少ない大型改定 です。
- 人材・労務の見直し
- 業務効率化とDX導入
- 加算・連携体制の再構築
これらを 「改定直前」ではなく「今」から進める ことで、
2026年改定を リスクではなくチャンス に変えることができます。
まとめ|2026年診療報酬改定を「経営の分岐点」にしないために
2026年の診療報酬改定は、
単なる点数改定ではなく、医療機関の経営姿勢そのものが問われる改定です。
- 人材をどう守り、どう活かすのか
- DXを業務改善と収益につなげられているか
- 自院の役割を地域の中で明確にできているか
こうした取り組みを進めてきた医療機関は、
改定を「追い風」に変えることができます。
一方で、対応が後手に回れば、静かに評価を落とし続けるリスクも現実的です。
とはいえ、
- 「改定内容が複雑で、自院への影響が分からない」
- 「どこから手を付ければいいのか判断できない」
- 「現場が忙しく、検討する時間が取れない」
という声が多いのも事実です。
診療を続けながら、経営改革や制度対応を進めるのは簡単ではありません。
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株式会社H2では、
病院・クリニックの規模や診療内容、地域特性を踏まえたうえで、
- 2026年診療報酬改定が 自院に与える影響の整理
- 人材・DX・加算・地域連携を含めた 現実的な対応優先順位の設計
- 「やるべきこと」と「今はやらなくてよいこと」の切り分け
- 現場を止めずに進める 実行可能な経営改善支援
を行っています。
いきなり大きな改革を行う必要はありません。
まずは現状を整理し、方向性を確認すること が何より重要です。
「今の経営判断が正しいのか確認したい」
「2026年改定に向けて、何を準備すべきか知りたい」
そう感じたタイミングが、見直しの最適なタイミングです。
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